大切なことはすべて音楽とゲームとマンガから教わった

ひきこもり系三大趣味について心に浮かぶことを書き留める

平家物語(アニメ)

今年は大河ドラマの影響か源平を扱った作品が多いですね!

見てないですがNHKのSF時代劇「義経スマホ」も話題。

というわけで、今年の1-3月クールで放映されたアニメ「平家物語」です。


原作は言わずと知れた古典のそれ。古川日出男さん訳のものが示されています。

京都アニメーションけいおん!(監督)や響け!ユーフォニアム(シリーズ演出)を手がけた山田尚子さんが、京アニ以外で初めて監督を務めたことも話題に。

アニメーション制作は「映像研には手を出すな」を手がけたサイエンスSARU。

主題歌は何度も繰り返しますが羊文学の「光るとき」で私の上半期トップ1。アニメの世界観を十二分に表した素晴らしい曲です。


琵琶法師の役どころとなる少女「びわ」を主人公に据え、びわの視点から平家の盛衰を描いていく物語。

父親を平家の武士に殺されたびわは、その恨みから平家の屋敷に忍び込み、平重盛(しげもり、清盛の息子)に平家の滅亡を予言します(びわには未来を見る力がある)。

それを聞いた重盛はびわを引き取り、自分の子供達と生活を共にさせます。

最初は反発していたびわも、平家の人々の温かさに触れるうち徐々に心を開き、次第に平家の滅びの運命を変えたいと願うようになります。

しかし運命を覆すことはできず史実通り平家は壇ノ浦で滅亡を迎え、それを見届けたびわは平家の人々が懸命に生き抜いた様を伝え続けることを誓い琵琶法師となる、というのが全体の展開となります。


まずは平家物語の最大の特徴である無常観をアニメでも十分に表現できていることが素晴らしい。

平家の人達って、「平家にあらずんば人にあらず」とか「奢れるものも久しからず」のような言葉が有名なので、一般的には高飛車、慢心、嫌なやつみたいなイメージがついていると思います。

でも実際は重盛は何より後白河法皇のために尽くそうとするし、重盛の息子維盛(これもり)は繊細で戦いよりも風雅を愛する性格だし、アニメではそのあたりをクローズアップして描くので平氏へのイメージが変わります。

そしてそんな清盛の子や孫達が、平家の衰退を何とか食い止めようと奮闘するも虚しく死んでいく姿は見ているだけで辛く、まさに諸行無常を感じさせるものでした。

皆人間なので、普段は楽しく、人を思いやり、温かく過ごしているんです(オープニング映像とかすごく楽しそう)。

でもそれは一瞬の出来事で、いざとなれば皆を守るため必死に戦い死んでいく。本当に壮絶な時代だったんだなと思います。


注目キャラは清盛の娘で高倉天皇の妻、安徳天皇の母となる徳子(とくこ)。

何はなくともCVが早見沙織さん!もう聞かないクールはないくらいの人気声優ですね。

早見さんの凛とした声が徳子の生き様にぴったりで、平家の事情に人生を左右されながらも息子の安徳天皇を絶対に守り抜くと決意するところなど、母として女性としての強さを感じさせます。

一方で、平家と対立しがちな後白河法皇と良好な関係を築いたり、びわを妹のように可愛がったりと優しい一面が滲み出てくるのも早見さんの癒し系ボイスがあってこそ。

おっと、早見さんの話ばかりになってしまいましたが、徳子も平家方、天皇方双方の立場にある者として、びわと同じく歴史の生き証人的役割を担っていますね。


最後にこちらも見所のひとつとして、びわの琵琶演奏シーンがあります。

平家物語の各見せ場(壇ノ浦等)において、大人になったびわが登場し、その場面を琵琶をかき鳴らしながら吟ずるというもの。

普段は淡白なびわが突然朗々と歌い上げるので、それまでの軽い雰囲気が厳かなものに一変し、古典的芸術性が高まる感じがします。

エンディング映像ともリンクしているのですが、エンディング曲がめっちゃラップっぽく、そのミスマッチ感もまたうまいなと思います。


清盛が築いた栄華の陰で苦しみ、戦い抜いた人々の物語。

ぜひご覧ください。