大切なことはすべて音楽とゲームとマンガから教わった

ひきこもり系三大趣味について心に浮かぶことを書き留める

ドライブ・マイ・カー

今回は珍しく小説の話。

濱口竜介監督、西島秀俊さん主演の映画、「ドライブ・マイ・カー」がアカデミー賞4部門にノミネートされ、話題になっています(映画はもちろん見てません(^^;)でも見たい!)。

どこかで聞いたことのあるタイトルだなと思ったら、原作が村上春樹さんの短編小説とのこと。

それなら持ってるなと思い、本棚を探してみたらありました。

「女のいない男たち」という表題の短編集に収められており、初出は2013年に文藝春秋、単行本は2014年の発刊です。


この短編集、村上さんの単行本には珍しく「まえがき」がついています。

村上さん自身も、めったに書かない、今回だけは特別に「業務報告」として書いたと言及していますが、このまえがきが村上さんの短編の書き方を紹介していて面白い。

村上さんが短編を書く時は、6-7本を一度に集中して書くそうです。

そうすることにより、それぞれの作品に一貫性を持たせることができ、共通のテーマなりモチーフに沿って作品群が出来上がるので、単行本に収録する時も違和感なく組み上げることができる、と。

なるほど確かに素人の我々でさえ、年齢や時代背景によってその時々の心情や影響を受けるモノが変わりますから、より感受性の強い小説家ならなおさら、時期によって自分なりのコンセプトが設定されるということはあるのでしょうね。

それで間を空けずに集中的に書き上げると、ちょうど単行本一冊くらいになるというのも面白いです。


さて、ドライブ・マイ・カー再読してみました。

60ページ強の短編なので、早い人なら30分くらいで読めちゃうと思います。

2000年代に入ってからの村上作品は、かつてのノルウェイの森のように何回も繰り返し読むということをしていないので、まったく話を覚えていませんでした。

それでも久し振りに読んだ村上さんの文章は、やっぱり心地よく、体の中にすうっと染み込んできました。

内容としては、妻を亡くした俳優が、ドライバーとして雇った女性に対して、妻が犯していた不倫という過ちについて訥々と語るというもの。

この淡々とした描写、静謐な空気感、過ぎ去ったものを思う喪失感、そして再生。

扱う題材や設定は時代とともに変化しますが、醸し出す雰囲気は変わることはなく、大好きです。


この空気感を映画でどのように再現するのか。

これが過去からなかなか越えられない壁なんですよね…。

2010年に公開されたノルウェイの森もかなり厳しい評価を受けていました(涙)。

当然ガチャガチャしたものは論外なんですが、静かすぎても単調な展開でのっぺりとなる。

未だかつて誰も成功したことがないと言われている村上作品の映画化ですが、今回は既にアカデミー賞という世界最高の映画賞での評価がなされています。

これはもうぜひ見てみたいですね!


最後にいつものどうでもいい着眼点を。

「女のいない男たち」は短編集なので、ドライブ・マイ・カーを含めて6編の物語が収録されています。

どの物語も「女のいない男」が主人公として出てくるのですが、その名前がどれも独特(変)なんです。

ドライブ・マイ・カーは家福(かふく)、以降、木樽(きたる)、渡会(とかい)、羽原(はばら)、木野(きの)。

木野だけは普通っぽいですが、それが物語のタイトルになっているので何か変。なお、表題作の「女のいない男たち」は一人称形式の「僕」なので名前なし。

なかなか人生で巡り合ったことのない名前シリーズですよね。

これは何か意味があるのかな?ないだろうなw


ということで、DVDのリリース(または地上波放送)を心待ちにしております!