大切なことはすべて音楽とゲームとマンガから教わった

ひきこもり系三大趣味について心に浮かぶことを書き留める

新世界より

これはまた壮大な世界観を持つ深いアニメですね。

2008年に日本SF大賞を受賞した、貴志祐介さんの小説を原作とする和風ファンタジー。全25話。

制作はA-1 Picturesで絵も綺麗です。


「呪力」と呼ばれる超能力を獲得した人間社会の物語。

主人公の渡辺早季(わたなべさき)や朝比奈覚(あさひなさとる)は、「全人学級(ぜんじんがっきゅう)」と呼ばれる学校で呪力開発に励む毎日。

優しい両親、信頼の置ける友人や先生、雄大な自然の中で、何不自由のない生活を送る早季でしたが、12歳の夏季キャンプの時に世界の秘密の一端に触れてしまい、そこから過酷な運命に翻弄されていきます。

果たしてこの世界に隠された秘密とは何なのか…というのが基本プロットです。


前半は前提知識がないとなかなかに難解ですが、世界設定と登場人物を理解するためだと思って耐えましょう(^^)

世界の秘密が明らかになってくる10話くらいから俄然面白くなってきて、その世界観に引き込まれていきます。

後半は、種族間抗争や人間の「業(ごう)」などにテーマがシフトし、さらに深く壮絶な展開に。

所々に鬱展開もあるので苦手な方はご注意です。


さて、見所?なのかは人それぞれですが、この作品、意外と「百合展開」が多いです。

というか百合だけでなく、男性同士の恋愛描写もある。

早季は同性の秋月真里亜(あきづきまりあ)、覚は同じく同性の青沼瞬(あおぬましゅん)とそれぞれ恋人関係の時期があります。

2000年代にいち早くLGBTを取り入れた作品と言うこともできるわけですが、注目すべきは、この世界では、このような関係は世界から争いをなくす手段として推奨されているという点。

人は他人に傷つけられそうになると、肌を重ねることで闘争本能を低下させ、争いを回避するという設定です。

現実世界でもそういうことがあるような、ないような…そこはよく分かりませんが、個人的にはこれは興味深い解釈だなと思いました。

いずれにせよ、見る時は一人で、をお勧めします(^^;)


新世界よりというタイトルから、ドヴォルザーク交響曲を想起された方も多いかもしれません。

まさにその通りで、本作品においても随所に第2楽章(いわゆる「家路」)が差し込まれます。

それが本作品の和風テイスト、壮絶な展開からの喪失感や物哀しさ、場面によっては優しさや温かさを演出するのに一役買っており、なくてはならない要素となっています。

特に最近のアニメは映像が芸術の域にまで達していますので、改めてアニメとクラシックは合うと思いました。


最後に、言葉が難解であることに関するエピソードを。

本作では「ラーマン・クロギウス症候群」や「愧死機構(きしきこう)」など、現実には存在しない創作された言葉が多用されます。

人間とは異なる「バケネズミ」と呼ばれる種族がいるのですが、バケネズミはいくつかのコロニーを形成して生活しており、代表的なものとして「しおやあぶコロニー」という言葉が物語序盤から何度も出てきます。

私、原作を読んだことがないので、ずっと耳で聞いて自分の頭の中で「シオヤーブコロニー」とカタカナ変換していました。

しかし!全編見終わってWikipediaを読み始めたら、「しおやあぶ=塩屋虻」であることが判明!

これは初見殺し。さすがに分からんww


鬱&百合展開にはご注意ながら、壮大な世界観や深い考察が好きな方にはおすすめです。

時間のある時に腰を据えてどうぞ。