大切なことはすべて音楽とゲームとマンガから教わった

ひきこもり系三大趣味について心に浮かぶことを書き留める

風の谷のナウシカ(原作)

「映画のナウシカには原作があって、映画とは全然違うストーリーが展開されるんだよ」という話は結構昔から言われていることです。

また、この原作が作られた経緯もジブリ鈴木敏夫さんのインタビュー等で語られています。

当時鈴木さんは徳間書店の社員で、アニメ専門雑誌「アニメージュ」の編集者。

宮崎駿さんと協力してアニメ映画の企画を出しましたが、「原作のない映画なんて有り得ない」と上層部に否決され、「だったら原作から作ってやろう」と宮崎さんと始めたのがナウシカの連載なのだそうです。

アニメージュで連載されたナウシカは人気を博し、無事映画も公開。その後のスタジオジブリの快進撃はご承知の通りです。


で、ホントに今さらなんですが、ずっと読みたいと思っていたこの原作ナウシカ、全7巻を読破しました。

登場人物が多く非常に難解、絵も少しごちゃごちゃしていることもあり、読み進めるのに結構時間を要しました。

しかしさすがの宮崎さん。あくまでファンタジーの手法を使いながらも、現代社会に警鐘を鳴らし、その中で人がどう生きていくのかというテーマを提示してくるあたり、心に迫るものがありました。

語り尽くされた感もありますが、あらためてこの作品の見どころをまとめてみたいと思います。


まずは壮大な世界設定。

1,000年前の人間の愚かな戦争(火の七日間戦争)により世界は崩壊。

腐海(ふかい)」と呼ばれる猛毒を出し続ける蟲や植物が世界を覆い、人が住める地域が狭まる中、大きく3つの勢力に分かれて人は必死で生きています。

ひとつは大国「トルメキア帝国」。強大な軍事力を背景に世界の支配者となるべく戦争を繰り広げます。

もうひとつが「土鬼諸侯国連合(どるくしょこうこくれんごう)」。宗教色の強い民族集団で、信仰する宗教によって敵味方に分かれて争っています。

最後がその他勢力。ナウシカが住む「風の谷」やアスベルが住む「ペジテ」などは辺境の小国で、トルメキア帝国と同盟を結ぶ形で傘下に置かれています。

トルメキア帝国と土鬼諸侯国連合という二大大国の戦争にナウシカやアスベル等の小国が巻き込まれていくというのが基本的な構図。

その中で多くの犠牲を払いながらもナウシカが世界の真実に迫っていくという壮絶な展開。

映画では構図を単純化させるために土鬼諸侯国連合が省かれていますが、原作ではむしろ土鬼の物語と言ってもいいくらい中心に置かれています。


次に人物の魅力。

ナウシカやユパ様は原作でも映画同様、圧倒的魅力で描かれます。

注目すべきはトルメキア帝国のクシャナとクロトワ。

クシャナはトルメキア帝国の第四皇女で、上に異母兄が3人います。

愛人の子であるクシャナは父王からも兄達からも疎まれ、常に命を狙われています。

しかしクシャナは部隊の統率者として類稀なる能力を持っており、情にも熱いことから、部下の兵士達から絶大なる信頼を得ているのです。

クシャナのためなら死も厭わない部下と「お前達の死は無駄にしない」というスタンスを取り続けるクシャナ。いちいち格好良いです。

一方クロトワは平民出の軍人。

国王からクシャナ監視のため派遣されますが、事態が混沌を極めてきたため裏切ってクシャナのために働き始めます。

特筆すべきは軍艦の操縦能力。

現場叩き上げの実戦的な技術で軍艦を操り、これまた現場兵士の信望を集めます。

映画では冴えない感じで描かれていますが、なかなか格好良いですよ。


最後にナウシカの選択です。

終盤、世界の真実に触れた時、ナウシカにひとつの選択の機会が訪れます。

ネタバレになるので言えないですが、そこでナウシカが行った選択は、いかにも人間を愛するナウシカらしいものでした。

現代を生きる我々も心に刻むべき答えだと思いますので、ぜひ確かめてみてください。


若き日の宮崎さんの熱が今でも伝わってくるようなナウシカの原作漫画。

じっくりとどうぞ。