大切なことはすべて音楽とゲームとマンガから教わった

ひきこもり系三大趣味について心に浮かぶことを書き留める

幼女戦記

カルロ・ゼンさんのライトノベルを原作とし2017年にアニメ化。

主役に悠木碧さん、脇役に早見沙織さんが声優として起用されていて、今見ると豪華です。

町口哲生さんの「平成最後のアニメ論」でも取り上げられています。


基本プロット。

現代で出世街道をひた走る有能サラリーマンが、仕事上の恨みによりホームから突き落とされ、とある世界に"幼女"ターニャ・デグレチャフとして転生します。

そこは第一次世界大戦前後のヨーロッパのような世界で、ターニャは"帝国軍"の軍人として育てられます。

前世の記憶を武器に優秀な成績を修め、後方任務に配属されれば身の安全を図れるとターニャは考えますが、皮肉にも優秀過ぎたが故に最前線に投入され激しい戦いに身を投じていくことになります。


帝国軍のモデルはおそらく当時のドイツで、世界史の知識があると本作をより深く理解できるようです(町口さんの著書にはこのあたりの解説もされています)。

私は知識がなかったので今までのファンタジー知識をもとに展開を受け入れていきましたが、本作を見てあらためて思ったのは「戦争を続ければ続けるほど戦争は終わらない」ということでした。


帝国は領土拡大を目的として戦争を行なっており、ターニャ達の活躍により一定の勝利を収め戦争は終結するかに見えます。

しかし帝国の勢力拡大は周辺国の脅威となるため、周辺国は共同で帝国に反攻。

帝国は全方位での戦いを余儀なくされ、戦争を続ければ続けるほど戦争が終わらない状況になっていきます。

戦争は何らかの理由があって開始されるものですが、できるだけ早く目的を達成して戦争を終わらせたいと思っているのはどの国も同じなはず。

しかし、一方の目的達成はもう一方の未達成というゼロサムの関係にあるため、未達成の方が再度目的達成のための行動を起こすという負の連鎖に陥るのです。

一度戦争を始めてしまうとこの矛盾を永遠に抱え続けることになるため、やはり戦争という選択肢は絶対に取ってはいけないものだと思います。


本作のもうひとつの大きなテーマは「この世に神はいるか」です。

主人公はサラリーマン時代から自分の力に絶対の自信を持つ無神論者です。

それを嘆いた神的な存在(存在X)が神の存在を認めさせるため、主人公を戦争という絶望的状況に転生させ、神にすがるよう仕向けます。

これに関するターニャの結論は(少なくともアニメ第1期では)出ていないようですが、私は個人的には「神はいない」雰囲気を感じました。


冒頭の主人公をホームから突き落とした人や、絶対に勝てないことが分かっているにも関わらず「祖国のため」という理由で帝国に抵抗し続ける人達など、本作では人間は究極的には非合理な生き物として描かれているように感じます。

それはおそらく人間が感情を持つが故なのだと思うのですが、このような非合理な生き物が無数に存在する世界において、神が合理的な結論に持っていくことはもはや不可能に近いのではないでしょうか。

もしそれが可能なのであれば本作も丸く収まり、戦争は終結した形で描かれるはずです(しかしそうなってはいない)。

今後の展開がどうなるか分かりませんが、現時点では神は否定されているような気がします。


また小難しいことを書きましたが、"ラノベ発"、"異世界転生"、"幼女"、"恐怖萌え"etc.

2010年代アニメを語る上で外せない作品ですので良ければぜひ!