大切なことはすべて音楽とゲームとマンガから教わった

ひきこもり系三大趣味について心に浮かぶことを書き留める

輪るピングドラム

まわるピングドラムです。

2011年の放送。全24話。

今月、10周年を記念して劇場版も公開されます。

本作を見ようと思ったきっかけは、以前ご紹介した町口哲生さんの著作「教養としての10年代アニメ」の続編「反逆編」で取り上げられていたから。

全部見終わった後再度読み返しましたが、背景にあるいろいろな切り口を示してくれていて、さすが面白いなと思いました。


高倉家の3人兄妹、冠葉(かんば)、晶馬(しょうま)、陽毬(ひまり)は、ある日池袋の水族館に遊びに行きますが、謎の事故により陽毬が亡くなってしまいます。

絶望に暮れる冠葉と晶馬の前にこれまた謎の「ペンギンの帽子」が現れ、それをかぶった陽毬は息を吹き返しますが、その存在は今までとまったく異なる「プリンセス」のようなものでした(帽子を取ると普通の陽毬に戻る)。

プリンセスは「陽毬の命が欲しければ、『ピングドラム』を手に入れるのだ」と冠葉と晶馬に命じます。

果たしてピングドラムとは何なのか、なぜ陽毬は死ななければならなかったのか、兄妹に隠された秘密とはetc.多くの謎がこの後登場する多くの登場人物とともに語られていきます。

色鮮やかで可愛らしい絵柄とは裏腹にストーリーは難解かつダークな雰囲気で進んでいきますので、ぜひ本編をご覧ください。


本作の特徴かつ見所の一つに、プリンセスの変身シーンがあります。

上述の通り、陽毬はペンギンの帽子をかぶるとプリンセスに変身するのですが、それがプリキュアの変身シーンのように毎回同じ映像で展開されるのです。

初めて見た時は一体何が始まったんだと戸惑うのですが、何度も繰り返されるうちに慣れていき、最後には決め台詞の「生存戦略〜!」が出た瞬間に「来た〜!」という感じで楽しみになっていきますw

プリキュアの変身シーンもそうですよね。毎回ベタなシーンなんだけどなぜかテンションが上がってしまうという。

この手法を映像・アニメ業界では「バンクシステム」と呼んでいるそうです。

すなわち同じ背景、映像をバンク(銀行)のように保管しておき、決まったシーンでその映像を繰り返し使うというもの。

尺埋めと同時にその作品を特徴付ける効果も見込まれ、今回初めてこの言葉を知りましたが、確かにいろんな作品で使われてるなと思いました。


変身シーンに使われている音楽にも注目です。

答えを先に言うと、主に1980年代に活動した日本のロックバンドARBが1987年にリリースした「ROCK OVER JAPAN」という曲が使われています。

といってもマイナーな曲なのでご存知ないですよね。私も失礼ながら知りませんでした。

この曲を本作では劇中アイドルグループである「トリプルH」が歌っており、原曲は骨太なロックなのに対して、本作ではカラフルでポップな相当雰囲気の異なる曲に仕上がってます。

途中で原曲の存在に気づいて聴いた時、そのあまりの違いについ笑ってしまいました(^^;)

でも耳に残る良い曲です。


さてストーリーの話に戻りますが、本作を深く理解したい場合、前提として持っておくべき知識が3つあります。

すなわち「旧約聖書の禁断の果実(イヴのリンゴ)の話」、「宮沢賢治銀河鉄道の夜」、「オウム真理教と1995年に起きた地下鉄サリン事件」の3つです。

どのようにストーリーに絡むのかは割愛しますが、銀河鉄道の夜はタイトルは知っていても実際に読んだことがある方は少ないと思いますし、地下鉄サリン事件もリアルタイムでは見ていない方が増えていると思います。

ぜひこのあたりの知識を持った上で見ていただきたいと思います。


現代社会の様々な問題を提起しながらも、最後は家族という温かい(だけでもないのですが)テーマに昇華させていく作品。

ご興味あればぜひ!